世田谷線の匂い
誰かが歌ってた『首筋の匂いがパンのよう』と
人並みに異性と付き合ってきた中で、そんなことを感じた事は一度もない
パンはパンでも食パン、カレーパン、パンによってもちろん匂いが違う
思い出せるのは、大体ボディークリームの匂いか柔軟剤の匂い
僕の手はクリームパンみたいだ
というか首筋の匂いをそもそも嗅いだことがない気がしてきた
いろんなことを思い出し、当時は真剣に付き合っていた向き合ってたはずなのに今思うと何であんなことを言ってしまったのかしてしまったのかとか考えてしまった
星野源、謝れ
僕も謝る
匂いは強制記憶復元装置だと思っている
街ですれ違った誰かの匂いで振り返り
昔付き合っていた女の子を思い出してしまうし
散歩中に通った家の窓から香るカレーの匂いで実家に帰りたくなったり
雨上がりの夜にはあの日のライブを思い出してたまに泣く
見たことや聞いた事は自分に良いように湾曲してしまうけど、記憶だけはそれができない
あの日あの瞬間の光景がフラッシュバックする
びっくりするくらい鮮明に
だからこそ、物凄く落ち込んでしまう時もあるけど、その人にしか分からないその瞬間って凄く美しいと思う
誰かに話しても言葉じゃ伝わりきらない
来月から僕は世田谷線沿いにある街に引っ越す
駅から近いし、スーパーもコンビニも歩いてすぐの場所にある
何よりもおばあちゃんが一人でやっている喫茶店があって、そこの雰囲気が堪らなく好き(タバコも吸える)
少しずつ行動範囲も変わるだろうし新しい生活がとにかく楽しみ
帰り道マスクを取って深呼吸してみた
すれ違ったカップルに笑われてしまった
おやすみなさい